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HPVって何なん?

医療情報

HPVとは?

HPVとはHuman Papillomavirus(ヒトパピローマウイルス)の略称です。子宮頸がんの原因となるウイルスとしてご存じの方も多いでしょう。子宮頸がんは、一部の特殊ながんを除いてほとんどすべてがHPV感染によるものです。ヒトのみに感染するウイルスで、ヒトの中に住み続けて数年~数十年経ってがんを引き起こします。現在200種類以上の型が同定されていますが、すべてががんの原因となるわけではありません。がんと関連しているものをハイリスクHPVとよび、HPV16・18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58,66, 68 型が含まれます。ハイリスクHPVは、子宮頸がんだけでなく外陰がん、膣がん、肛門がん、陰茎がん、咽頭がん、口腔がんとも関連しています。
これに対して、ローリスクHPVは尖圭コンジローマ(良性のイボ)の原因となるタイプで、HPV6, 11, 42, 43, 44 型が含まれます。

感染経路は?

HPVは皮膚や粘膜の濃厚な接触(セックスや性的玩具の共有など)によって感染します。つまり、お風呂やプールで感染することはありません。

症状は?

ハイリスクHPVに感染しても症状はありません。がん検診で異常が出るのは、感染後かなり時間がたってからです。場合によっては数十年ということもあります。したがって、いつ感染したのかを特定することはできません。
これに対してローリスクHPVでは、感染者の多くが数週間後に性器に尖圭コンジローマという鶏のトサカのようなギザギザしたイボができます。かゆみを伴うこともあります。色は周囲と同じかやや茶色で、わかりにくいこともありますが、パートナーの陰部にこのようなイボを見つけたら、性交渉は行わず(オーラルセックスでも感染します)、受診を勧めて下さい。

ハイリスクHPVに感染したら絶対がんになる?

ハイリスクHPVに感染したからと言って必ずしもがんになるわけではありません。性交経験がある女性のほとんどが一生のうちに一度はHPVに感染すると言われています。それくらいありふれたウイルスなのです。しかし、一度HPVに感染しても自然に排除されることも多く、特に20歳代では排除されやすいことが分かっています。感染したウイルスが体の中に潜伏し続けることを「持続感染」といい、そのうちの10%の女性が異形成となります。さらに、異形成の状態が長く続くとその中の一部が子宮頸がんへと進展してしまいます。

感染予防方法は?

残念ながら、100%感染を予防する方法はありませんが、ワクチン接種で感染確率を下げることができます。ハイリスクHPVの中でもHPV16型と18型では、感染からがんへ進展するスピードが速いことがわかっています。若い世代の子宮頸がんではHPV16型と18型が原因となっている割合が高く、特に20歳代では90%をこの2つの型のHPVが占めています。そして、子宮頸がんワクチンとは、この2つの型の感染を予防できるワクチンなのです。ただし、既に感染しているHPVを排除する効果は期待できませんので、感染する前(初交前)の接種が必要です。子宮頸がんワクチンには予防できるHPVの型によって2価、4価、9価の3種類がありますが、3種類すべてで16型と18型は予防できます。子宮頸がんワクチンについては、「子宮頸がんワクチンってコワい?」の記事で詳しく書いていますので、ぜひ読んでみて下さい。

子宮頸がんにならない方法は?

たとえハイリスクHPVに感染したとしても、子宮頸がんにならない方法はあります。定期的(2年に1度)な子宮頸がん検診(子宮頸部細胞診)を受けることによって、がんになる手前の異形成(CIN)で見つけることができます。異形成にはCIN1、CIN2、CIN3があり、CIN1またはCIN2と診断された方は、HPVのどの型に感染しているのか保険診療として調べることができ、通常よりも短い間隔で細胞診を行ってがんにならないか監視します。CIN3と診断されると子宮頸部切除術(円錐切除術あるいはLEEP)という手術が必要となりますが、子宮の頸部を一部切除する手術のため子宮自体は残せますし、その後の妊娠も可能です。妊娠中にCIN3と診断された場合は、妊娠を継続しながら慎重に経過観察を行い、分娩後6週間以上経過した後に手術となります。ただ、妊娠中にがんに進行すると話がややこしくなりますので、妊娠する前から定期的に子宮頸がん検診を受けておくことが大事です。女性にとっての子宮頸がん検診は身だしなみのようなものです。「外に出るときは服を着る」と同じくらい「一度でも性交渉をもったら頸がん検診を受ける」というのは当たり前の事だと思って下さい。

まとめ

  • HPVは子宮頸がんの原因ウイルスで、性交渉によって感染します。
  • 子宮頸がんワクチンは感染予防に効果的ですが、100%の予防効果はありません。
  • 子宮頸がんはワクチン接種と2年に1度の頸がん検診によって予防できます。

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