産婦人科医ゆーてるす@OBGYe

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キャリアの始め方と終わり方

キャリア形成

人生も折り返し地点を過ぎてくると、「時間」についての概念が変わってきます。学生時代は、時間なんて無限にあるのだと思っていました。それだけ、こなさなければいけないタスクが少なかったんだと思います。医者は忙しいとよく言われますが、正直それは「診療科」と「求めるレベル」によります。緊急の多い診療科では、計画通りになんて仕事は進まないし、最新の知識や技術を取得しようと頑張るほど時間はなくなります。寝る時間くらい確保したいという理由で産婦人科が医学生から敬遠されるのも理解はできます。きっとこれは、医師以外の職業でも当てはまるのではないでしょうか?忙しいかどうかは、職業分野によるというよりも、どんな働き方をするのかと自分がどこまでのレベルを目指すのかにかかっているのでは?そして、時間が仕事に取られることがつらいと感じるのならば、その仕事は自分がやりたい仕事ではないかもしれません。仕事自体を楽しむことができれば、忙しいとかつらいとかは感じないものです。

そこで考えてほしいのは、キャリアのゴールです。死ぬまで現役という方も大勢いらっしゃいますが、私は人生の最後には余白を作りたいと考えています。要するにいつか引退する日が来るということです。死ぬ日は自分で決めることはできませんが、引退する日は決めることができます。引退する日にやるべき事をやり尽くしているかどうか、評価するのは自分自身ですし、やるべき事を定義するのも自分です。なので、まずゴール(引退日)を決めて、次にやるべき事を決めて、逆算していつやるかを決めていくと、今やらなければいけないことが見えてきます。医者になりたての頃は、少しでも早く一人前の医者になりたいと思っていました。救急車が来るとすっ飛んでいって、採血とか検査オーダーを率先してやって、手術メンバーに入れてもらおうと必死でした。手術がうまくなりたいとか、患者さんに信頼される医者になりたいとか、目先のことで精一杯で、方法論として正しかったかどうかは自信がありませんし、今ならもっと効率的にうまいことやれたんじゃないかと思いますが、別に後悔はしていません。「ガッツがあるやつだ」と周囲に認めてもらえたことで、困ったときに手を差し伸べてくれる人に恵まれたのだと思います。

やるべき事を決める上で重要なことは、時代を見抜く力です。少なくとも10年後、20年後に世の中がどうなっているのかをよく勉強して見極めておかないと、AIに完全に置き換わるスキルを貴重な時間を使って身につけようとするという、滑稽なことにもなりかねません。もう一つの重要な事は、自分が夢中になれるかどうかです。やるべき事=やりたい事 でなければモチベーションの維持ができずに達成率も下がってしまいます。キャリアの終盤まで「スキル習得」を目指して頑張り続けるのは悪いことではありませんが、もしもそれが、もっと若い誰かの「スキル取得の機会」を奪うことになるのなら、少し慎重になるべきです。キャリア終盤には、必ず「スキルの還元」をやるべき事として配置して下さい。

私は人生の最後に余白を作りたいと書きましたが、その余白を使ってやりたいことがあります。そのために、引退日をいつにすべきか、それまでにどれくらいの資金を準備しておけばいいのか、考えるだけで、ワクワクします。人生最後の余白は、自分に対するご褒美なのです。30代前半の頃は仕事がすべてでした。使命感とかやりがいとか、まさに産婦人科医は自分の天職だと感じていました。その頃通っていた英会話スクールの先生に、「いくら天職でも一生やるわけじゃないでしょ?リタイヤしたら何する?」と言われて「あっ、何にも考えてなかった!」と気付きました。こんなに楽しい仕事にも終わりが来る。しかも、リタイヤ後の人生もきっとそこそこ長い。今の生活が一生続くわけではないという当たり前の現実を目の当たりにして、「そうだ!今のうちに一回日本を離れよう!」というぶっ飛んだ考えに至る訳ですが、この話はまた、他の機会に。

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